- 8:00
- 妻に作ってもらった朝食のサンドイッチをつまみながらメールチェック。世界中の産地から届く情報を確認。寒波により、オーストラリア産アスパラガスの成育が芳しくないとの連絡を受け、すぐに対応を検討する。
- 8:40
- 部内ミーティング。スーパーや量販店向けに営業している営業第三部の野菜担当者を交えて、各産地状況を報告。今後の営業方針を検討する。
- 9:00
- 市場向けの営業活動と、産地に対する仕入活動を並行して行う。営業ではブロッコリーやセロリが順調な売れ行き。パプリカは少々苦戦。一方、仕入では、北海道の契約農家に、北海道カボチャ「ひざかり」の出荷状況を確認する。「ひざかり」は品質重視の国産自社ブランド。営業面でもプッシュする方針。
- 12:30
- 昼食。後輩に頼んで弁当屋で買ってきてもらったハンバーグ弁当を頬張る。
- 13:00
- 営業・仕入活動を再開。市場のお客様から「来週の入荷予定」の問合せあり。
- 15:00
- 営業活動は終了。引き続き、仕入活動を続ける。オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、中国、韓国などの産地と連絡を取って、情報を収集。懸念事項であったオーストラリア産アスパラガスにも、思ったほど被害が出ていないと分かり一安心。
- 16:00
- 来日しているフィリピンの農場担当者と打ち合わせ。これからシーズンが始まるフィリピン産オクラについて、作付け・出荷計画を検討する。品質の安全性を確保するため、トレーサビリティについても話し合う。
- 18:00
- デスクに戻り、本日の営業書類をまとめる。パプリカの産地オランダはこの時間帯から本格的に動き出すので、連絡を取り合い、急ぎの要件についてはすぐに対応する。
- 20:00
- 帰宅。ブロッコリーやセロリの産地であるアメリカが動くのは、日本では深夜から朝。緊急を要する問題が起これば、昼夜を問わず産地と連絡を取り、対応策を指示することも。

ホクホクな北海道産カボチャ「ひざかり」もラインナップに
営業第三部はおもに輸入野菜を扱っている部署です。私は2007年からここの部門長として、産地情報や国内市場情報の収集・分析を通して、部全体の事業方針・戦略立案に携わっています。また、世界中の産地に対する仕入責任者として、仕入先の新規開拓、生産体制・技術・品質管理の指導、出荷量や価格などの交渉を担当しています。
主な取扱商材(産地)は、パプリカ(オランダ、ニュージーランド、韓国)、ブロッコリー(カリフォルニア、中国)、アスパラガス(オーストラリア)、オクラ(フィリピン)、カボチャ(トンガ、メキシコ、ニュージーランド)などがあり、チコリやセロリなど西洋野菜も扱っています。基本的に、北半球の産地は夏場、南半球は冬場がシーズン。ですから、南北半球の産地とうまく取引することで、どんな商材でも国内市場へ通年、安定した供給ができるのです。ちなみにパプリカは今では当たり前にスーパーに並んでいますが、じつは15年ほど前に弊社が日本に初めて紹介した商材なのです。
最近、消費者の皆様の間では、価格の安さよりも、高品質な(美味しい)もの、安全なものを求める傾向があります。いわゆる高付加価値な商材を期待されているという土壌が広がってきているのです。そこで弊社では、いい商材であれば国外だけでなく国内の産地からも仕入れ、お客様に提供していく戦略を進めています。例えばカボチャ。海外からは従来の果肉に粘りけの多い「えびす系カボチャ」を輸入していますが、現在は北海道の契約農家で栗のようにホクホクした果肉の「紛質系カボチャ」も独自に栽培してもらっています。これは弊社の自社ブランド「ひざかり」として、お客様に好評を博しています。
生産者と市場、弊社の利益バランスが最大のポイント
仕入責任者としてもっとも心を砕いているのは、生産者利益と市場利益、そして弊社の利益のバランスです。三者がある程度満足できる結果を出すことが、私の仕事の“肝”かも知れません。例えば、野菜は天候によって収穫量が大きく左右されます。たくさん収穫できて、その商材を潤沢に入荷していれば相場は安定しますが、供給量が増えすぎると相場は下がります。逆に商材が十分入荷できなければ、当然価格も高くなります。相場状況がよければ、弊社としてもできるだけ多く仕入れたいので生産者側に多く出荷するようにプッシュします。ただ、入れすぎても欠損商品が出る原因になります。反対に業界用語で言うところの「ナヤミ(品余り)」の状況下では、本心を言えば仕入れをストップしたくなります。しかし仕入れをストップばかりしていると、「モガキ(品薄)」の時であっても生産者側は出荷してくれなくなります。そのさじ加減が難しいのです。
同様に価格面でも、いつも市場側の意見ばかり聞いて交渉をしていると、産地はついてきません。産地の言いなりでも、今度は弊社の利益確保が難しくなり、高値になって市場側がついて来なくなります。実際にパプリカなどは、頻繁に価格交渉が入ります。いつも折り合いをつけて輸入しますが、産地の収穫が多く困っているときは販売協力し、生産者を助けることもしばしばあります。市場側に特売を組んでもらって、できる限り数量をはいてもらい、価格もできるかぎり下げ止めるなどの方策が必要なのです。逆に、収穫量が少ない場合を見越して、産地や仕入先の分散化を図るということも弊社が最低限やっておかなくてはならないリスク管理です。
仕入担当者はヤジロベエにならなくてはいけないと上司から言われますが、両方をコントロールすることも、仕入れの面白さであり難しさなのです。
一緒にいいものを作っていこうという姿勢を示して
仕入れの仕事は、まず産地とのコミュニケーションを密にすることが重要です。気象の変化、栽培上のトラブル、出荷の際の不備など、日々さまざまな問題が出る可能性があるので、それにすぐに対応できる体制が必要なのです。海外の仕入れ先と日本とは時差があるので、朝一番にアメリカから仕入れと情報収集が、昼間にフィリピン、韓国、オーストラリアから、そして夕方にオランダからと、国によって話ができる時間が異なります。例えば、アメリカでの緊急時には夜中に電話が鳴ることもあるので、携帯電話は離せません。
また産地作り、仕入先開拓も重要な仕事です。オクラの産地開拓のためにフィリピンに行った時のことです。発展途上国で貧富の差が激しい国で、生産者によって商品に対する取り組み方も違っていました。ある農家は最新の機械を導入し、衛生管理もしっかりしています。しかし別の農家では設備も貧しく、衛生管理に関しても意識が低いことも。食の安全性が問われている昨今、どういう環境化で生産され、パッキングされているのか知る必要があります。またどこのシッパー(Shipper=運搬船手配会社)と取り組むべきかを判断するのも仕入れの仕事のひとつだと考えています。実際に現地を視察し、足りない部分があれば指摘し、技術的な面でも指導を行う。生産工程や商品表示に対しては弊社のルールがありますから、それも徹底してもらう。このような現場との密なコミュニケーション、そして文化の違いを超えて一緒にいいものを作っていこうという姿勢を示すことが、その後の関係性を大きく左右することになるのです。
我々の最終目的は、市場・消費者の皆さんの喜び
営業第三部では今後、海外の仕入先の拡充はもちろん、さらに国内仕入先の開拓も進めていく方針です。すでにお話しした北海道のカボチャ「ひざかり」の他、高知ではエノキダケ、広島ではボストンレタス、宮城ではパプリカ、静岡ではカボチャと、いくつかの国内産地との独自ルートもでき上がっています。輸入野菜は通年の安定供給、国産野菜はできるだけ品質にこだわったものを、という目的の棲み分けはさらに進んでいくことでしょう。
我々の最終目的は、市場・消費者の皆さんに喜んで買っていただけるような商材を、必要なときに提供することです。そのために産地開拓があり、技術指導があり、価格交渉があり、夜中でも枕元に置かれた携帯電話があるのです。このもっとも大事なことを常に心に刻みながら、我々はさらなるチャレンジをしていくつもりです。


